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6.1 ギャンブル依存症の「完治」は、誰にも認定できない

「いつになったら、やめられたことになるのか」

やめ始めた人が、必ずぶつかる問いです。答えを先に書きます。

その日は、来ません。

ですが、悲観しないでください。悲観しなくていい理由を書きます。

「その日は来ません」というのは、ギャンブルをやめられた=完治した、と誰も判断することはできない、という意味です。

そもそも病気の回復を認定するのは医者ですが、ギャンブル依存に「もう治りました」と認定してくれる医者はいません。つまり、回復したと認定する術が、原理的にないのです。

第2章で、私は「治る病気だ」と書きました。矛盾ではありません。治る病気なのに、「治った」と認定する方法だけが、誰にもない——そういう話です。つまり、実際は治っているかもしれないのです。

6.2 お金と信用は、取り戻せる

完治の認定はない、と書きました。ですが、これを絶望と読まないでください。認定がなくても、私たちには何も問題がない——その理由を書きます。

考えてみてください。ギャンブルをやめられなかったとき、私たちは何を失うのでしょうか。

まず、お金です。ギャンブル依存で最終的に問題になるのは、お金がなくなることです。信用の失墜も、家族の危機も、元をたどればお金から始まっています。そして、お金は取り戻せます。体の健康とは違って、やめ続けてさえいれば、ギャンブル以外の方法で取り戻せるのです。借金も、返し続ければ減ります。

次に、信用です。これも取り戻せます。信用情報というのは、「これから返せます」という約束ではなく、「これまでどう返してきたか」という記録で測られます。記録なら、積み直せます。カードが作れない期間にも、終わりがあります。時間はかかりますが、これも確実に戻る側のものです。

つまり、完治の認定がないこと自体は、悲観することではないのです。

6.3 ギャンブル依存になったことの、数少ないメリット

ここで一つ、前向きな話をします。何も、悲観するだけではないということです。

ギャンブルというのは、さまざまな形をして、日常のあちこちに潜んでいます。これまでギャンブルをしてこなかった人たちが、これからも一度もギャンブルに苦しまずに済む、という保証はあるでしょうか。現にギャンブル依存になってしまったあなたと、ギャンブルから遠い位置にいる人たち。その違いは、もともと何だったのでしょうか。

私は、「不運にも」ギャンブル依存になってしまった人がほとんどだと思っています。親がギャンブル依存で、ギャンブルが身近にあった。大学の友人にパチンコをする人が多くて、パチンコに慣れてしまった。家の前に新しくパチンコ店ができて、覚えてしまった。——どれも、自分で選んだ環境ではありません。たまたま、そこにギャンブルがあった。それだけのことなのです。一方、ギャンブルから遠い位置にいる人たちは、これまでたまたま、ギャンブルをする機会がなかっただけかもしれません。

つまり、誰にでも、依存症になるリスクは存在するのです。そう。あなたの大切な人も、ギャンブル依存になってしまう可能性があるということです。

あなたは、不運にもギャンブル依存になってしまった。でも、いまギャンブル依存と正しく向き合って回復することができれば——正しい対応の仕方が身について、これからの人生を、ギャンブルに苦しまずに生きられる可能性が高まります。

そしてそれは免疫となって、これからの人生であなた自身を守ってくれます。いまあなたは、挽回できる位置にいます。挽回できなくなってから病気に向き合ったのでは、少し遅いのです。

そして、一番言いたいのは、ここからです。自分の大切な人——たとえば自分の子どもがギャンブル依存になったとき、あなたは、正しく助けることができます。

長い人生です。いまギャンブル依存になってしまったことは、これからの人生をより良く生きるために、必要なことだったのかもしれません。

6.4 「もう大丈夫」は、最大の罠

誰でも、ある程度ギャンブルから離れていると、「もう大丈夫な気がする」という感情になるときがあります。

やめて数ヶ月たつと、必ず来ます。調子がいい。衝動も来ない。「自分はもう克服したんじゃないか」と思える日が来るのです。

私は何度もこの感覚を味わいました。だから断言できます。あれは全部、幻想でした。「もう大丈夫」と思った人は次第に、危機感が薄れ、依存症のコミュニティから距離を置き、元の日常に戻っていきます。そしてギャンブルに対しての油断が生じるのです。呪いは、その瞬間を待っています。

見ないようにしていたギャンブルの動画も、日に日に見る時間が増えていき、少しならいいか、と思ってスリップしてしまうのです。

ギャンブル依存症は治る病気だと、私は思っています。実際に、あなたはもう治っているのかもしれません。しかし、ギャンブル依存症が治ったと判断する方法が、ないのです。

であれば、自分の回復に疑問を持ち、油断せずに回復と向き合っていく。それが、あなた自身を守る考え方なのです。

これで、考え方も出揃いました。あとは、動くだけです。ただ実は、この「動く」が一番難しい。次の章は、その話です。

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