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7.1 意志を高める、唯一の例外
第3章で、意志は意図して持つことができない、と書きました。モチベーションの動画を見ても、効果はだんだん薄れていく、と。
実は、一つだけ、意図して意志を高める例外的な方法があります。それは、行動です。まず行動することで、意識が変わる。そして意識が変われば、その中にある意志も、あとから高くなっていく——という考えです。
では、行動とはどういったものでしょうか。ギャンブルをやめるために手足を動かして行ったことは、すべて行動に含まれます。たとえば、「どうしたらやめられるのか」を調べることも、立派な行動です。
一つ、例を挙げます。どうしたらやめられるのかを調べて、文章にする。その行動によって、「自分はギャンブルをやめることに向き合っている人間だ」という自己像が形成され、それが、やめる意志に良い影響を与える——という具合です。
これは、私の経験談にとどまる話ではありません。心理学には、これを裏付ける有名な理論が2つあります。
一つは「自己知覚理論」です。人は、自分の内面を覗き込んで「自分はこういう人間だ」と知るのではなく、自分の行動を外から観察して、それに合わせて自己像を作っていく——という理論です。ブロックアプリを入れた。入店制限を申告した。その行動を見て、脳は「自分は、やめようとしている人間だ」と認識を書き換えていく。「やめようとしている自分」なんて、まだ想像もつかないかもしれません。でも、その自己像は、行動から作られていくのです。
もう一つは「認知的不協和」です。行動と意識が食い違うと、脳は不快になり、どちらかを変えて一致させようとします。このとき、行動はもう起きてしまって消せませんから、修正されるのは、必ず意識の側です。「どうせ自分はやめられない」という古い自己像を持っていても、やめるための行動を積めば、矛盾に耐えられなくなった脳のほうが、その古い自己像を書き換えていくのです。
新しい自己像は、行動から作られる。古い自己像は、行動との矛盾で壊れる。どちらの理論も、向きは同じです。心は、行動に合わせられていく。だから、意志が湧くのを待たずに、行動する。行動が、意志を連れてきてくれます。
7.2 知ることと、やることの間
もう一つ、知っておいてほしいことがあります。どうしたらやめられるかを、人に聞いたり、調べたりする。答えを得る。ここまでは、多くの人がやります。調べるという行動は、あなたの意識を変化させ、意志を高めると書きました。しかし、聞いただけで満足してしまう人が多いような印象を受けます。ChatGPTに対策の方法を聞いて、それで満足しているようでは、もったいないのです。そこに「一度やってみる」という行動が加われば、あなたの意識は劇的に変化します。
私の例を話します。「もう無理だ」と思った日の後、私は1週間かけて、「どうすればやめられるか」を文章に書きました。誰に頼まれたわけでもありません。自分のために書いたのです。調べて書くうちに、家族には家族の苦しみがあることを知りました。苦しんでいるのは自分だけではないと、そのとき初めて知ったのです。また、「ギャンブルは意志ではやめられない」という、もともと自分の中にあった仮説を、確信に変えることもできました。そして書き上げた文章を、no+e(ノート)というサービスで公開しました。
この一連の行動が、今の私の意識の源となり、回復の起点になりました。当時の文章は、その後の改定に次ぐ改定で、今では原型を留めていません。ですが、それでいいのです。必要なのは、意識なのですから。
7.3 今日、外に出る行動を一つ
私が行った「文章を書く」という行動は、非常におすすめですが、効果があるのは、別にこの行動に限った話ではありません。何か一つ、あなたの中だけに収まらない行動を、やってみてください。その行動がきっと、あなたの意識を変化させ、いい方向に導いてくれるはずです。要は、なんでもいいのです。ギャンブルをやめるための行動であれば。
たとえば、ギャンブルをやめるためのコミュニティに参加してみる。つながるという点では、LINEのオープンチャットがおすすめです。24時間、気軽につながれますし、匿名なので、実名も身の上も明かす必要はありません。まずは入ってみるだけでも、いいのです。私が運営している部屋への入り口は、次の案内ページにまとめてあります。kaiju-support.com/linksそして、できれば挨拶をしてみる。さらに、個人的に一番おすすめなのは、「ギャンブルをやめたい」という気持ちを、そこで吐き出してみることです。外に出したその言葉に、先ほど説明した脳の補正機能が働いて、「ギャンブルをやめたい自分」という自己像を、形成してくれるのです。
頭の中の決意は、あなたの一部です。波と一緒に消えます。外に出した行動は、あなたの外で働き続けてくれます。
次の章では、多くの人が最後まで外に出せずにいるもの——借金の話をします。