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9.1 やめ続けている人の、共通点

やめ続けている人には、コミュニティにつながり続けている、という共通点があるのです。逆に、コミュニティから離脱した人は、スリップして戻ってくることが多い。

では、つながり続けることの何が、やめる上で効果があるのでしょうか。

ちなみに私は、やめてまだ4年ほどです(2026年8月現在)。LINEオープンチャットのコミュニティも、3年ほど運営し続けています。そのコミュニティを通したつながりが、私がやめ続けていることに直接効いているのかは、証明できません。でも、私自身がコミュニティの力でやめられている——その実感は、はっきりあります。

つながり続けることは、あなたを一人にしません。一人になると、ギャンブルの呪いはつけ込んできます。「もう大丈夫」という感覚が生まれた瞬間を、ギャンブルの呪いは見逃しません。

しかし、つながり続けていれば、「もう大丈夫」という気持ちの発生そのものを、抑えてくれます。たとえ生まれても、コミュニティの仲間が引き戻してくれます。一人になってしまえば、それが働きません。そしてスリップする——という流れです。つまり、つながり続けることは、それだけで、ギャンブルからあなたを守る対策なのです。

9.2 それでも、人は離れていく

ですが、人はコミュニティから離れてしまいます。理由の多くは、二つです。スリップしてしまった罪悪感から。そして、「もう大丈夫だ」という自信から。それと、もしかしたら——効果がないと感じて、離れていく人もいるかもしれません。あくまで、私が運営するLINEオープンチャットで見てきた話で、限定的ではありますが。

まず、スリップの罪悪感から退会する人。気持ちは分かります。でもそれは、コミュニティを離れる正当な理由にはなりません。考えてみてください。あなたがその部屋にいて、他のメンバーがスリップして、同じように退会を選ぼうとしているとき、あなたはどう思いますか。おそらく「スリップはしょうがない。一緒にやめていこう」と思うのではないでしょうか。そうです。人に対する思いと、自分の行動が、一致していないのです。メンバーに対する罪悪感は、実は存在しません。現にあなたは、人がスリップしても責める気持ちにならない。同じように、あなたがスリップしても、責める人は誰もいないのです。

それでも離脱したくなるのだとしたら、本当の理由は別にあります。意識してか、しないでか、もうギャンブルが止まらなくなっていて、近い将来またやってしまうことを、自分で予見している。それをメンバーに説明できないから、先に抜けてしまいたい——そういう気持ちなのではないかと、私は思っています。つまりそれは、罪悪感の問題ではなく、次のスリップの予告なのです。

次に、数ヶ月やめて、「もう大丈夫」と思って退会する人。本当に大丈夫なのか、まだ大丈夫ではないのか。その判定は、この際どうでもいいのです。私が言いたいのは、もう大丈夫だとしても、抜ける必要はないということです。「もう大丈夫」の中身は、ギャンブルで苦しんだ自分を否定したい気持ちなのだと思います。分かります。借金と同じで、早くきれいな体になりたいのです。その気持ちが、判断を誤らせている可能性があるのです。

最後に、効果がないと感じて離れていく人。私が運営するオープンチャットの話であれば、申し訳ありません。しかし、こう考えてみてはいかがでしょうか。あなた自身が、そのコミュニティを、より良い方向に導いてみるのです。効果がないと感じたということは、あなたはこれまで、与えられる側にいたのかもしれません。でも、あなたは、与える側になってもいいのです。そして、与える側に回ることは、ギャンブルをやめる上で、非常に強力な力になります。

9.3 助ける人が、結局は助けられる

コミュニティを運営する中で、私はずっと、人を応援する側に立ってきました。コミュニティの中には、症状の度合いによって、助けられる人と、助ける人がいます。助けられる人とは、ギャンブルの悩みを吐き出したり、どうしたらやめられるのかを教えてもらったりする側。助ける人はその逆で、話を聞き、アドバイスをする側です。

私はあるとき、気づきました。実際には、助けられることより、助けることのほうが、やめる力になっているのです。

理屈は、後から考えれば単純です。人にアドバイスした内容は、全部自分に返ってきます。「現金を持たないでください」と人に言った翌日に、自分が現金を持って店に行けるでしょうか。人に強いアドバイスをするということは、自分への戒めそのものです。

これは、私の思いつきではありません。依存症の回復研究には、古くから「ヘルパーセラピー原則」という考え方があります。援助をする人が、いちばん援助を受けている——人を助けることそれ自体が、助ける側の回復を進める、という原則です。実際、アルコール依存症の回復者を追った研究でも、仲間を助ける活動をしていた人のほうが、その後も断酒を続けられていた、という報告があります。

人にアドバイスをするというのは、行動です。その行動を、あなたの脳は外から観察して、「自分は、やめる方法を人に教えられる人間だ」と、自己像を書き換えていく。その自己像が、あなたの意志を支えるのです。

助けられる側から助ける側に回るには、ある程度の時間がかかります。でも、それを乗り越えて、自信を得て、自分の歩みを誰かに教える。それは教わる人の力になりますが、それ以上に、教える人自身の力になります。その好循環が、コミュニティ全体を「やめ続けられる場所」にしていくのです。

9.4 コミュニティの力の、無限の可能性

私は一貫して、ギャンブルをやめる上で、完璧な対策はないと書いてきました。しかし、コミュニティの力にだけは、別ルートで、ギャンブルの苦しみから完全に抜け出せる可能性があるのです。それは、コミュニティの力で、社会のルールを変えるということです。つまり、法律や制度を変えて、ギャンブルを強制的にできないようにする。別に、ギャンブルを一律禁止にしなくてもいいのです。たとえば、馬券の購入やパチンコの遊技に、マイナンバーカードの紐付けを必須にする。そのうえで、「もうギャンブルをしません」と意思表示した人は、金輪際、ギャンブルができないようにする。たった、それだけのことでいいのです。

「ギャンブルを規制したところで、また別のギャンブルが生まれてくるだけだ」——そんな声が聞こえてきそうです。それなら、それでいいのです。新しく生まれたものを、また規制すればいいだけなのです。

ギャンブル大国の日本では、依存が疑われる人だけで約70万人。家族を入れれば、その何倍もの人がギャンブルに苦しんでいます。情報通信がこれだけ発展した今なら、私たちはSNSを通して、容易につながることができます。社会を変えるほどのコミュニティも、作れるはずなのです。私は、できると思っています。コミュニティを大きくしていくことは、もしかしたら、「ギャンブルをやめる確証」を手に入れることにつながるかもしれない。だから私は、コミュニティを大きくしたいのです。私のコミュニティは、まだまだ数が少ない。これからどんどん増やしていきます。その意味でも、ぜひ、コミュニティにつながっていてください。

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